ホーム活躍するOB・OGたち  第29回

第29回 トマトの魅力をたくさんの人へ届けたい!

生物資源科学部植物資源科学科 平成 15年卒業
(現:生命農学科)
農業生産法人
株式会社井出トマト農園
代表取締役 井出 寿利氏

2013年全国農業コンクールで農林水産大臣賞を受賞。神奈川県農業コンクールでは県知事賞を受賞。そして本学生物資源科学部学部長賞を受賞。先代のお父様から引き継いだトマト農園を数年で改革し、強く躍進した秘訣は何だったのでしょう。


管理の行き届いた園内


美しく色づきはじめたトマト

進路はどのように決めましたか。

実家は藤沢のこの地で長く農業を行っており、父親の代でトマトの水耕栽培をはじめました。私は平塚農業高校を卒業後、家業のトマト生産に生かせるように大学を選びました。
卒業後1年間就農し、その後不動産の会社に2年間就職しました。これは営業職でお客様の「買ういうことはどういうことか」を学びたいと思ったからです。

不動産会社では新人トップセーラーになったのですね。

営業職を学ぶために就職しましたが勉強になりました。2年目からは役員会議にも参加するようになりましたが、実家からの要請もあり再び就農しました。

就農後はどのように展開しましたか?

平成18年に戻り、最初は父親の農業をもう一度習いながら観察しました。
その当時はハウス内の環境を見るセンサーが瞬間値しか見えなかったので栽培のレベルが低く、販売では生産した全てを農協一任としていました。

それで生産技術の向上と販路拡大の両面で改革を行ったのですね。

販売のノウハウはなかったのでまず農産物直売所で販売をはじめました。そこで売れ残った商品の売れ残りのパターンを分析して改善を続けました。誰も詰め方が悪いとか教えてくれません。そこから想像して改善を積み重ねていく作業です。
その後、ジュース、ケチャップ、ジャムなどの加工品も手がけました。どれもトマトの素材の味が伝わるように工夫しましたが、最初の1、2年は思考錯誤の連続です。これも教えてくれる人がいません。ただ、試行錯誤した結果自分とお客さんが考える本質をみたオリジナル商品が出来たと思います。


直売している美味しそうなトマト


トマトを使った様々な加工品

生産面では自然環境任せにすると安定生産は難しく、施設を制御してあげる必要があります。ハウス内の温度、湿度、二酸化炭素、日照など様々な要素を常時モニタリングして生産性を上げています。ただこれらのデータが読める力は失敗の中、経験から学んできました。
現在私たちの農園では13品種のトマトを栽培しています。これだけ多品種のトマトを生産する生産者は少ないのですが、それに対応するために「苗テラス」を作って苗から育てています。世界には4,000種のトマトがあり、国内には400種のトマトがあります。私たちが多品種にこだわるのは皆さんに美味しいトマトの魅力を伝えたいと思っているからです。


ハウス内の環境データを常時モニタリング


二酸化炭素の量も常に管理

学生時代はどう過ごされましたか?

ここから大学までは近いのでバイクで通っていました。農業の勉強は面白かったです。特に植物生理学は興味をもって聞きました。
部活はカッター部で4年間過ごしました。体を作りたいと思って入りましたが試合ではやはり防衛大学校や海上保安大学校は強かったですね。相模川や海で練習をしていました。
生物資源科学部には獣医になる人や多方面に進む人たちがいるので、カッター部を通じて知りあった仲間とは今も交流しています。

校友会に参加していかがですか?

生物資源科学部校友会の富嶽会に数年前から参加して役員を務めています。大学との関係では私たちの農園が学校と近いこともあり、時々学生の人たちが見学に来られます。
生物資源科学部には食品ビジネス学科がありますが、そこの学生さんが考案したトマトスープに材料の提供などで協力しています。学生の野菜摂取不足を補うために、おいしいトマトスープをレトルトで企画したところが面白いですね。

これからやりたいことをお話し下さい。

今、朝霧高原農場を計画しています。藤沢では夏の暑い時期は暑くなりすぎてトマトに負担がかかるので収穫を休まなくてはなりませんが、朝霧高原は高地なので夏でも気温が低く、真夏でもトマトの出荷が出来るようになります。そうすると1年を通じて途切れることなくトマトを出荷出来ます。もう土地は確保しており造成に入っています。
また、本当に良い食材を提供した軽食店も広げたいと思っています。井出トマト農園カフェのようなかたちで良い食材で奇麗な1日を過ごせる場を提供できたらいいですね。


直売所の店頭


直売所店内


様々な種類があるトマト

訪問を終えて

広い園内も案内していただきました。案内をいただく途中でも気がついた点は即刻手直し、改善を行っておられました。農林水産大臣賞を受賞するだけでなく、多数のマスコミから取材も受けています。数年でこれだけの注目をあびるようになったのも、日々大変な努力を積み重ねている結果と感じました。

会社紹介

農業生産法人 株式会社井出トマト農園
住所 : 藤沢市宮原 2420
TEL : 0466-65-0719
ホームページ : http://www.idetomato.com/

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