ホーム活躍するOB・OGたち  第37回

第37回 創業60年。お世話になった地元に恩返しする気持ちで仕事をしていきたい

理工学部 土木工学科
平成6年卒業
株式会社キャリアドライブ
代表取締役 田村 嘉規(タムラ ヨシノリ)氏

自動車教習所からスタートしたキャリアドライブは、今年で創業60周年を迎えました。現在では3つの自動車教習所をメインに訪問看護、人材紹介、学習支援など6つの事業を展開。同社代表取締役の田村嘉規氏にお話しを伺いました。

大学の進路はどのようにして決めたのですか?

高校は中高一貫の静岡聖光学院に通っていました。父が富士と藤沢の二か所で自動車教習所を経営していたので、大学を卒業したら、僕もその会社を継ぐのだろうと自然に思っていました。しかし、高校時代に通った塾の英語の先生から「いきなり親の会社に入るより、まずは外に出て社会勉強をした方がいい。その後、家の会社に入ってもいいのではないか」とアドバイスを受けて、確かにそうだと思いました。でも「正直、何もやりたいことが見つからないと言ったら、「君は車とかオートバイが好きだから、モノをつくる仕事はどうだ?あるいは、道路や建物をつくるとか」と言われ、イメージが広がる中で、海洋関係の仕事をしたいという思いがこみ上げてきました。そこで海洋土木を学べる日大理工学部土木工学科に進みました。ちなみに父は日大法学部出身です。

どんな学生時代を送られていたのですか?

入学してすぐにオートバイのツーリングのサークルに入りました。ところが1年の夏休みにバイクツーリングで長野に行った時に事故を起こしてしまい、脊髄損傷で2ヶ月間入院してしまいました。入院中は親に毎日洗濯物を取りに来てもらうなど、相当迷惑をかけました。単位の方はギリギリで取り、何とか4年で卒業できました。

卒業後はどうされたのですか?

新卒で鈴与建設に入社しました。当時バブルがはじけた後でも建設業はまだ盛況で、僕も現場監督として採用してもらったのだと思っていたのですが、海洋土木を扱う工事2課に配属されました。元々希望していた部署だったのでやりがいがありました。
後に聞いたところ、採用面接をした常務が僕を気に入ってくれたとのこと。同じ日大理工の土木出身だと知り、日大出身でよかったと思いました。
鈴与グループは、当時新入社員を数百人採用していたのですが、入社式では僕が新入社員を代表して挨拶しました。会社生活は非常に楽しかったのですが、2年半ほど経って、父から突然電話がかかり「鈴与を辞めて、藤沢に行ってくれ」と言われ、翌々月には鈴与を辞めて藤沢に引っ越したのです。

それでお父様の経営する会社に転職をされたのですね。


藤沢高等自動車学校の受講生の皆さんととともに

当時、父の経営する自動車教習所は、社長の父が富士の責任者を兼務し、常務の叔父が藤沢の責任者を務めていました。
叔父は実務能力が高く、仕事の仕方については叔父から学びました。その一方、父とは一緒に仕事をしたことがほとんどなく、帝王学を教わった記憶もありません。父からは「お前の良いところは真面目なところだけだから、そこをずっと大事にしていけ」と言われたくらいです。
僕が社長になったのは平成25年1月です。この会社に入って22年経ちますが、社長になるまでの17年間は、現場の一職員として、各地に営業に行ったり、作業員としてコース清掃や草刈りをやったりと、率先して何でもやりました。コースの清掃作業は、僕が一番真っ黒になってやりました。

社長になって感じたことは?

2つの経験から、責任の重さを痛感しました。1つは、それまで父の名前で借り入れた銀行の契約書の連帯保証のサインを、全て僕の名前に名義変更したこと。とても自分の資産では返せないような額が全て自分の借金になったわけです。もう1つは、自宅を新築するとき付き合いの長いメインバンクからよい条件で借り入れようと相談したところ、「社長、決算書見せて下さい」と言われて渡したら、自分の期待よりも悪い融資条件でした。「決算内容が良くないからいい条件で貸せられません」と告げられ、すごくショックを受けました。社長に対する世間の見方は本当に厳しいと痛感しました。
父が長年にわたり社長を務めていた当時、自動車教習所だけで経営は安定していましたが、業績も低迷し赤字を数年重ねたタイミングで社長をバトンタッチしました。いよいよ自分が先頭を切ってリードしなければいけない時がきたという危機感を持ち、経営改善にむけて日々悩み、経営書を読み漁り、様々なセミナーに参加しました。引き継いだこの会社をなんとかよくしなければいけないという一心でした。
先代の頃は、会社で人を育てるという考えはなく、従業員は自ら努力して成長するもの、成長しない人はトップの言うことを聞いて仕事をしていればいいという発想でした。会社から与えられた教育はほとんどゼロ。しかしそんなことでは、社員はいつまでも成長しません。社員の成長あってこそ会社も成長する。費用を掛けてでも社員の成長のきっかけづくりを会社としてすべきと考え、今では社員教育にも力を入れています。

経営理念がユニークですね。

社長室に創業者の祖父が筆で書いた「為せば成る」という額があるのですが、祖父の時代はやれやれの時代で誰も逆らえない強烈なトップダウンでやっていました。父の代になり、時代の流れで事業の規模も大きくなりましたが、「ウチの会社は何を大事にしているの?」「理念といったら何?」と聞くと誰一人としてわからなかった。明文化ももちろんされていなかったので、会社を一つにまとめていくためには、大義名分(会社としての価値観)が必要だと思い、自宅で夜星空を見ながら考えたのです。自分が大事にしているものは何か、自分が主軸に置く言葉は何かを考えると、"貢献"とか"誰かのために"という言葉が自分の中に自然と肚落ちし、長年お世話になっている地元や地域から社会一般に貢献していくことを見据えて、理念(「我が社は、社会貢献企業でなければならない」)をつくったのです。 さらに法人設立50周年を機に社名を「キャリアドライブ」に変更しました。一人の人間が人生を前進(ドライブ)する中で、キャリアを積んでいくための様々な資格や免許などの取得をサポートしていきたい、人生の幸せに貢献したい、との思いからです。
まずは事業を通じて地域貢献し、地元から応援される会社になれるよう目指しています。「あそこの会社があってよかったな」とか「あそこの会社がなければ困る」という存在になるために、僕らのしなければならないことは、ファンを作っていくことです。自動車教習所は地元の方に密着した事業です。教習所を選ぶポイントは、やはり自分の家から近いことが動機づけになります。今までは地元の方が安全運転することで地域の安全に貢献すると考えていましたが、今後は交通安全だけでなく、地元の生活の全てに関わり、地域に必要とされてファンになってもらえるようなサービスが提供できる会社になりたい。50年間お世話になった地元に恩返しをするような仕事を目指しています。 教習所は、親、子、孫の3代で通っている方もいます。藤沢市の会合に出席すると、教習所を経営していると話すたび「そこの卒業生だよ」「俺、前に通っていたよ」と反応が返ってくることが嬉しいです。地元の認知度が高く身近に感じる親しみがありますので、それらの方々に向けていろんなサービスを展開していきたい。


ミュンヘン近郊のツーリングで

社長就任以来、事業を多角的に展開されていますね。何か転機になった出来事があるのでしょうか?

ある時、鎌倉投信の鎌田恭幸社長の講演を聞き、非常に感銘を受けたので、鎌田社長に直接会いに行って悩んでいることを話しました。その時、鎌田社長から勧められた人材開発のセミナーに参加し、まずは自分を変えないと人は変わらないということを学びました。これが契機となって、いろいろな人との出会いが広がっていきました。自分が意識を持って変われたことが経営者としての原点と思っています。
いろいろな方とお会いする中で「こんなことをしたい」「こんなふうになっていったら社員も幸せになるのではないか」といった話をしたりしていると、類は友を呼ぶではないですが、そういった方と「事業を一緒にやりましょう」と話が進み、実際に事業が生まれてきたことも。これも自分が変わる中で生じた転機だと思います。
弊社では、メインの自動車教習所以外に人材紹介業、レンタルバイク、資格取得支援などの事業を展開していますが、その中でも一番成長している事業は訪問看護です。僕は元々医療にも興味を持っていて、なにかこの分野で関われないだろうかと思って調べていたところ、家内から知り合いの看護師の方を紹介してもらったことがこの事業を始めるきっかけとなりました。彼女は今、この事業の管理者として活躍しています。
訪問看護は病院に入院するよりも医療費が圧倒的に抑えられます。これから広がりが期待されますが、国の税金を使う社会福祉ですので、何でもかんでもやればいいというのではなく、質もしっかり担保しつつ広げていければと思っています。医療の一端に関わるという使命感を持って取り組んでいます。

最後に校友に一言

日大OBは各分野で活躍しています。僕は校友会に参加して、交友関係がかなり広がりました。所属する湘南桜門会ではフェイスブックとかインスタグラムを使ってメッセージを出そうと今、動き始めています。ぜひ若い方にも参加して欲しいと願っています。

お話しを伺って

謙虚で誠実なお人柄を感じさせる田村氏、同時に事業を通じての地域貢献に対する熱い思いも感じました。湘南地域にお住まいの方で、これから自動車免許を取得したい方、訪問看護を検討中の方、ぜひキャリアドライブにお問い合わせください。

会社紹介

株式会社キャリアドライブ
住所:藤沢市土棚800
TEL :0466-45-7171
ホームページ:http://www.career-drive.jp/

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