ホーム活躍するOB・OGたち  第44回

第44回 ウェルネスシップをモットーに、よりよい地域医療を目指しています

佐々木病院院長の佐々木啓吾先生医学部医学科 昭和53年卒業
特定医療法人社団 育成社 佐々木病院
理事長・院長 佐々木啓吾氏

横浜鶴見の地に開業して一世紀近い歴史を誇る佐々木病院。親子孫三世代にわたって地域の人々と強い信頼関係を築き、医療に貢献する同病院理事長・院長の佐々木啓吾氏にお話しを伺いました。

どのように進路を決めて進めましたか。

佐々木病院院長の佐々木啓吾先生

当院は今年の10月17日で創立94周年になります。私の家は父と祖父も医者で、昭和2年に祖父が佐々木医院を開業、昭和27年に父が病院にした経緯があり、必然的に私も医者になることを親から期待されていました。が、実をいうと子供の頃はあまり医者になりたいとは思いませんでした。当時、開業医には往診があり、父は夜だろうが休みだろうが、電話が来ると往診に行っていました。あれを見て私はすごいなとは思ったけれど、あれじゃ自分の時間がつくれないじゃないかと。で、私は魚とかを育てるのが好きだったので他学部を受けましたが、結局、一浪して医学部に入りました。その時に親父に言われたのは、医者になっておけば将来好きなこともできる。医者になっても作家とか建築家とか、好きなことをやっている人も結構いるじゃないか。人の死を扱う職業は殺し屋と死刑執行人と医者しかいないと訳のわからないことを言われて。医者になってから好きなことをやればいいと思いましたが、なったらなったで、そのままずるずると今日まで医者をやっています。今は医者になってよかったと考えています。

医学部での勉強は厳しそうに思いますが、どのような学生生活を過ごされたのですか。

私がいた頃は、まだそれほど勉強は厳しくなく、私の学年の次の年から国家試験が厳しくなってきましたね。私たちは、ぎりぎりいい時代を過ごさせていただいた学生生活でした。
クラブは学部のヨット部に入って、4年の時には東医体(東日本医科学生総合体育大会)で3位になり、全医体(全日本医科学生体育大会王座決定戦)に出場しました。千葉の館山で合宿しました。

卒業後は?

医学部を卒業すると普通は大学の医局に残るのですが、私は大学に残らず、研修指定病院という制度が出来たばかりで、研修医として埼玉中央病院に9年間在籍しました。そこに在籍している間に、慶応病院の放射線診断部と築地の国立がん研究センターの内視鏡に研修に行かせてもらいました。最後はこの病院を継ぐのに循環器の知識を得るため、六本木の心臓血管研究所で一年間、心臓の勉強をさせていただき、こちらに戻ってきました。30代半ばです。

それでご実家の病院に入られたのですね。

古い病院でしたから、親父とここを継ぐか継がないかという話をし、継ぐことを決意し、この病院を新しくしたのです。

新しく改装されたのですか。

横浜市の佐々木病院外観1

親父は昔、建築家になりたかったんです。けれども医者になった。私はインテリアが好きなんです。だからお互いにアイデアを出し合って、病院を新しく建て直しました。建て直す時には、入院患者さんもいるため、二分割して建築しました。
ちょうどバブル全盛期の頃でした。当時、企業ではCI(コーポレート・アイデンティティ)がブームで、病院ではこれをHI(ホスピタル・アイデンティティ)と言っていました。高校時代からの親友の枡野俊明という僧侶で庭園デザイナー(日本造園設計社長、建功寺住職、多摩美術大学教授)が加わってくれ、彼がいろんな人を紹介してくれてHIをやりました。

HI導入で、どんなアイデンティティを?

この病院の理念を「ウェルネスシップ」としました。ウェルネスというのは、「患者さんにとって最適な健康状態」を意味します。それに接尾語のシップを付けたのです。シップというのは船でもあります。そうするとフレンドシップ、リレーションシップというような信頼関係という意味につながります。健康を中心とした患者さん、地域と、病院との信頼関係をつくっていくという意味でそういう言葉をつくったのです。私の医療のイメージを、HIを導入する時にこの言葉をつくり、込めました。
皆さん手弁当でやってくれました。HIをやったきっかけで、自分のやりたい、できる医療って何だろうと考えることにはなりましたね。これをやらなかったらそんなに深く考えなかったかもしれません。

先生のお考えになる医療とは?

横浜市の佐々木病院外観2

要するに来てすぐにかかれる、すぐ検査ができて、すぐ治療方針が決められる病院、というかたちですね。おなかが痛いといって大きい病院に行くと、今日は採血してエコーは何日で内視鏡は何日で、それが終わったら次に診察という感じでしょう。ウチだとご飯を食べてこなければよほどのことがない限りはその日の内にエコーも、内視鏡も混んでなければそこでやって、結果を話して薬を出したり、すぐ紹介状を書くことをしています。

鶴見区医師会の副会長もなさっているそうですね。

もう20年近くやっています。鶴見区は医療連携がすごく上手くできている地区なんです。始めて2年目になりますが、手上げした医療機関(医科、歯科、薬局、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所など)の電子カルテをインターネットでつなげる「さるびあネット」という面白い取り組みをやっています。患者さんにそれを登録してもらい、カルテが区内の医療機関で共有されているのです。この取り組みは最初に横浜市の補助金で始まりました。実はこうした都市型の医療ネットは鶴見区が初めてなのです。今年は横浜市全体に広げ、次に神奈川県全体に広めたいということで、県が補助金を出してくれるようになりました。

仕事以外で取り組んでいることは?

佐々木病院の駐車場

分野を問わず、手当たり次第に本を読むのが好きです。本屋に行くと2時間以上いたりします。昔は1週間に2冊以上は読めていたのが、今は1週間1冊も厳しいです。この年(67歳)になるとスピードが遅くなりますね。あとは今でもときどきヨットやボートに乗っています。

校友会について一言。

医学部では学部間とのつながりがほとんどなく、まるで単科大学みたいでした。けれども総会に出席すると全学部の卒業生が一同に会するので、総合大学であることを実感できますね。ここ3年程、校友会総会が医師会の日程と重なり出席できませんでしたが、日程が合えばまた出席したいと思います。

訪問を終えて

病院の近くまできて、道を歩いている人に行き方を訪ねたところ、案内するからと手を引いて親切に教えてくれ、地域に密着した病院だと思いました。佐々木院長はとてもやさしい先生です。鶴見区周辺にお住まいの方で、身体のご不調の方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。訪問看護ステーション、保育園、在宅型有料老人ホームも併設されています。

病院紹介

特定医療法人社団 育成社 佐々木病院
住所:横浜市鶴見区下末吉1-13-8
TEL:045-581-3123
ホームページ:https://sasaki-hospital.or.jp/

活躍するOB・OGたち一覧へ