ホーム活躍するOB・OGたち  第48回

第48回 業務をきっかけに資格取得、学びを仕事に活かす

有隣堂の川崎和広氏文理学部史学科 昭和61年卒業
株式会社有隣堂
管理本部総務部
部長 川崎和広氏

横浜の老舗書店といえば創業112年の「有隣堂」。今や神奈川、東京、千葉に約40店舗を構える大型書店です。最近ではYouTube「有隣堂しか知らない世界」がチャンネル登録数13.5万で大ブレイクしています。2年半前に日本橋コレド室町テラスにオープンした「誠品生活日本橋」も有隣堂が運営し、話題を集めています。今回は同社で総務部長を務める川崎和広さんに話を伺いました。

営業本部ビル
川崎氏の勤務する有隣堂営業本部ビル

どのように進路を決めたのですか。

高校は日大藤沢でした。歴史好きだったので文理学部史学科に進学し、日本史を専攻しました。もともと司馬遼太郎をはじめとした歴史小説が好きで史学科に入ったのですが、実際に専門で歴史をやるとなると、そういう世界ではないんですよ。大学では資料に当たってそこから研究テーマを見つけ、自分で研究するという学び方で、当初抱いていたイメージとはだいぶ異なりましたね。

どんな学生生活だったのでしょうか。

日本大学神奈川県人会
学生時代は神奈川県人会に所属し箱根駅伝で母校を応援
手前で応援をリードしている後ろ姿が川崎氏

在学中は神奈川県人会に入り、卒業するまで毎年、小田原で箱根駅伝の応援をやっていました。4年になって、それまでOBから借りていた応援の太鼓を県人会で作ろうということになり、OBの方々も含めて募金活動もやりました。当時の校友会神奈川県支部の北村支部長にも寄付金をいただきに伺いました。懐かしい想い出ですが、卒業後7~8年程してこの会がなくなってしまったのが残念です。
私は本が好きで、神奈川県人会をやっていたので、県内の企業に就職したいと思い、有隣堂に入りました。当時、有隣堂は町田に一店舗ある他は、店舗はすべて神奈川県内にありましたから。今年で入社して36年経ちました。

これまでいろいろな業務を経験してこられたと思いますが、印象に残る出来事などは?

有隣堂 伊勢佐木町本店
有隣堂 伊勢佐木町本店

最も印象深い出来事といったら、99年にEC(エレクトリックコマース=電子商取引)を担当したことでしょうか。当時、アマゾンが日本に上陸してくるというので、このままだと日本の本屋がみんなやられてしまうのではないかと書店業界は危機感を抱いていました。そこで取次会社の日販(日本出版販売)がアマゾンに対抗すべく「本やタウン」というECサイトを作ったのです。今は「HonyaClub.com」という名前で継続していますが。お客様がインターネットで本を注文して書店の在庫を活用し、お客様に本をお渡ししようという仕組みです。その加盟店の第一号が有隣堂で、私はそれを担当していました。ですから、日販の担当者と一緒にサイトの立ち上げから、実際に運用がはじまったところまでずっとやっていました。そうしたら日経のメディアでいくつかのECサイトの覆面調査した結果、有隣堂の「本やタウン」が一番早く本が届いたということで、日本一の本屋サイトだという記事が載りました。それからテレビ東京のワールドビジネスサテライトも取材に来て、インタビューされました。
ちょうど中小企業診断士の勉強をしていた頃でしたので、勉強仲間からテレビを見たぞというメールが結構来ました。そんな思い出がありますね。自分にとっては得難い経験を積むことができました。
その後、子会社に出向して社長をやりました。経営状態の厳しい会社だったので、倉庫を整理したり不良資産を片づけたりと難儀な仕事でした。

人事総務部長もされていましたね。

有隣堂 伊勢佐木町本店
有隣堂 伊勢佐木町本店全景

人事部門に異動してまずやったことは、アルバイトの一括採用でした。それまでアルバイトの採用は、各店の店長はじめ店のスタッフがやっていました。けれども募集して面接をしたりすると店舗スタッフの負担が大きく、また店舗によって採用のばらつきが起きてしまう。だから全社の店舗のアルバイトを一括で採用できないかと考えたのです。そうすれば応募者が横浜駅西口店を希望したとして、西口店は今、人がいるけれど、すぐ近くのルミネの店だったら空きがあるのでそちらに行かないかとか、振り分けもできます。人事部門がやることによって質がある程度、均一なかたちで採用できるようになりましたが、その仕組みを立ち上げるところからやっていきました。もちろん学卒の採用もやっていましたけれども。それまで人事労務の仕事などまったくやったことがなかったので、仕事をしながら勉強して社会保険労務士の資格も取得しました。

話が変わりますが、出版不況とか若者の活字離れが言われて久しいですが、その辺りは実際どうなんでしょう。

業界全体では1996年頃が売り上げのピークだったのですが、その後は右肩下がりです。人口が減っていることも一因だと思いますが。ただ書籍は下がる坂道が大分ゆるくなってきた感じがします。雑誌のなかでも漫画雑誌などは紙でなくて電子にシフトしています。ある出版社は最近、大幅な増収増益となりましたが、これは紙が売れてということではないですからね。
今は漫画がヒットすると、いろいろなコンテンツ、グッズなど多角的に展開しています。ひと昔前の角川が本を出して映画も作るみたいな、いわゆるメディアミックスですね。

本の形態も随分変わってきたのですね。

電子書籍が増えてきたのは事実なのですが、どちらかというと、人が24時間生活しているなかでLINEやFacebookなどといったSNSで時間を奪われていることが大きいと思いますね。それで本を読む時間がどんどん少なくなってきている。ウチの息子なんかを見ても、おそらく活字を読む量は私よりも多いくらいかもしれない。ただそれが紙で読む小説でなくてSNSでFacebookやYahoo!ニュースを見たりといった、コンテンツなんですね。
有隣堂も本だけでなく多角化しています。私が入社した頃は本の売り上げが6~7割でしたが、今は書籍のウェイトは4割位。あとはOA機器やアスクル代理店などの事業が大きな売上比率を占めています。

ところであと2年で還暦ですね。これから何かやりたいことなどありましたら。

富士山とバイク
富士山を背に愛車バイクとともに

50歳過ぎても毎年新しいことをやっていきたいと50歳の時に125CCのバイク免許を取りました。それで山梨や松本とかツーリングに行ったりしていたのですが、高速に乗れないと遠くまで行けないため、一昨年10月に大型免許を取りました。定年前後には、大型バイクで北海道と九州に行ってみたいなと思っています。

校友会への一言

ぜひ若い人にも入ってもらいたいですね。私も仕事が忙しくて一時期、なかなか出られない時期があったのですが、ここへきてまた参加させてもらっています。こういう利害関係のない集まりって社会人にとって得難いものだと思います。

訪問を終えて

お会いし、履歴書を見せていただきながらお話ししてくれました。事前に履歴書を用意されるなど、さすが総務部長です。ECサイトを担当した経営企画部門では中小企業診断士を、人事部門に異動後は社会保険労務士を取得。いずれも合格率数パ―セントの難関資格です。勉強熱心で真面目なお人柄が伺えました。「有隣堂しか知らない世界」は面白いです。まだご覧になっていない方はぜひ!

会社紹介

株式会社有隣堂
住所 :横浜市戸塚区品濃町881番地16
TEL:045-825-5551(代)
ホームページ:https://www.yurindo.co.jp/storeguide/

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