ホーム活躍するOB・OGたち  第49回

第49回 自動車の架装メーカーからモビリティメーカーへ

生産工学部管理工学科(現 マネジメント工学科) 平成13年卒業
株式会社トノックス
常務取締役 殿内崇生氏

1950年に日産の協力会社として横浜市で創業。現在はパトカーや消防車から保冷車、キッチンカーまで幅広く“働く車”の製作を手がけ業績を伸ばしている株式会社トノックス 常務取締役 殿内崇生氏にお話をうかがいました。

トノックス本社
トノックス本社・本社工場

日本大学への進学はどのようにして決めましたか

私が通った生産工学部の管理工学科(現 マネジメント工学科)は理系でもありながら文系の要素もある学科で全国的に少なかったことと、実際に工場を運営するうえで必要な生産管理、品質管理といったことを学べるということで選びました。父も日大の理工学部でしたが、父の10人兄弟のうち3人が日大で身近に日大出身者が多く、なじみがあったということもあります。

卒業後の進路を教えてください

卒業当時はトノックスに就職するという考えはまったくなかったです。最初に就職したのは東京にあるプリント基板の製造会社でした。トノックスとは分野が違いますが、同じ製造業ということで5年間勤務していろいろ学ばせていただきました。
そのあとの1年間は自動車の部品メーカーに勤めて、アメリカでの海外勤務も経験した後トノックスへ入社しました。

現在、業務全般をみているトノックスはどんな会社ですか

日産シルビア(初代)
当時の殿内製作所で作っていた初代日産シルビア

日産の社員だった祖父が創業し、2020年に70周年を迎えました。もともとは日産自動車の下請けをしていましたが、現在は系列に関係なく各メーカーさんの仕事をさせていただいています。業種は架装メーカーに分類されると思います。官公庁向け警察車両や緊急車両、企業・個人向けに福祉車両や冷凍車・保冷車・宣伝車・移動販売車・現金輸送車・移動ATM車・バスの架装やトラックの荷台製造など特装車の企画・開発から製造まで行っています。

ウニモグの特装車
メルセデスベンツのウニモグをベースにした特装車

架装メーカーは乗用車専門に大量生産をする会社と、トラックなどの大型車両のフルオーダーの架装を手がける会社と大きく2分されますが、当社は量産も1台もののオーダーメイドもどちらも幅広く対応する工場ということで全国的にもユニークな存在だと思います。
現在は一番多く受注しているのはパトカーで、そのほかにはいわゆる“道路パト”とよばれるNEXCOさんの黄色い車や消防車では消防団等が使う小型消防車の架装も行っています。

計測車両
路面計測車

そのほか特装車を扱う技術の応用として当社で保有している道路計測車・トンネル計測車を使った計測解析業務があります。レーザーを使用した計測システムで損傷の3要素(ひびわれ、わだち掘れ、平坦性)を80km/hの高速で測定が可能なので、高速道路でも通行規制を行う必要はありません。

また、旧車のレストアも手がけており、お客様の要望に応じた形で蘇らせています。その際、自社の防錆塗装設備で電着塗装ができるので、車体が長持ちするということでお客様から喜ばれています。

ところで、学生時代はどのように過ごされましたか?

軟式野球部に在籍していましたが、部活とアルバイトが主でまじめな学生生活だったと思います。大学の野球部といってもとくにサポートがあるわけではなく、グランドの場所取りから試合の準備まで審判以外はすべて自分たちでやっていました。他大学との交流試合なども盛んでした。生産工学部のある千葉県内を中心に全国を皆で一緒に回った楽しい思い出があります。私は企画運営する立場だったので打ち合わせなども頻繁で、他大学の人たちと自分の大学の部員以上に仲良くなってしまうということもありました。

研究室では車に関してですが、当時、すでに開発されていた電気自動車、燃料電池自動車、水素自動車やCNG(圧縮天然ガス)などの実用可能性について探るといった研究を行っていました。

学生時代のエピソードがありましたらお願いします

大学時代、1人の友人と出会っているのですが、不思議な縁を感じます。彼は同じ学科の同級生で野球部も一緒でした。ある時、会計士の資格を取りたいというので相談されたことがありました。私も応援するからやってみたらと言ったせいかどうかわかりませんが、彼は就職せずに数年間、試験勉強をして合格し会計事務所に就職しました。生産工学部から会計士になった人はほとんどいなくて快挙だと思います。

受験勉強期間は当社でアルバイトをしていて、そこでも縁があるんですが、当時の社員とは私なんかよりずっと親しくて驚いたことがあります。10年くらい前に再び戻ってきてくれて現在は当社の会計関係をみてもらい、私の右腕といった存在で支えてくれています。

2代目ブルーバード
ディーラープレゼントでストップランプと連動して光る眼(2代目ブルーバード 工場保管)

日本大学の卒業生とのかかわりはいかがですか

管理工学科出身者が集まる学科のOB会に参加させていただいています。最年長は72歳の方までいらっしゃって何10年も続いているOB会と思います。年に4回会合があり、この2年はコロナのために中止になっていますが、会社経営者の方ばかり約15名が参加されていて、退職されるとその会社から次の代の方が入れ替わりで参加される形です。生産工学部はこうしたOB会が機械や建築など学科ごとにあって、全体の会が年に1回は開催されています。
皆さん経営者なのでお話を聞くだけでも得ることが多く、ある業界でNo.1メーカーとして活躍しながら、業界の革命児として多方面から取材されるなど注目されている方もおり、お話を聞くだけでとても刺激になります。

2代目ブルーバード正面
2代目ブルーバードの正面

今後の会社の展開について

現在、技術革新が著しい自動車産業においてトヨタさんもそうですが、“モビリティ”という新たな枠組にシフトされてきています。モビリティとは車に限定せず自転車、飛行機、電車、さらには歩くことも含め、動くものすべてモビリティであるというわけですが、我々も従来のように車に限定してしまうとなかなか新しい発想が生まれません。自動運転も一般道を走るものに限定する必要はないわけです。ということで当社も架装メーカーというビジネス領域からモビリティへ発想を転換し、新たな挑戦をスタートさせています。

手始めにEV車と自動運転を実現させようということでいろいろな企業と打ち合わせをしています。構内専用のモビリティや古い車をEVコンバージョンにする、あるいはその装置を販売するといったことです。自動運転については搬送用ロボットのような形で、ある大手企業との共同開発のお話が進んでいます。 実際に収益が上がるのは先になると思いますが、若い人に新しい世界を見せてあげて、経験させてあげることで彼ら将来の発想力、行動力につながることを期待して割り切ってやっていこうと思っています。

初期のウニモグ
工場に保管されている初期のメルセデスベンツ・ウニモグ

若い世代に向けて

今年は久しぶりに営業職として大卒の人を採用しました。たまたま日大の卒業生でしたが、応募者数が予想以上に多く、しかも立派な大学を卒業する方がたくさんいました。今後、本格的に大卒採用を行うのなら、彼らが夢をもって働ける会社でなければいけないと思っています。そのためには自分たちがもっと勉強し、考え方も柔軟にしていかなければいけないということを感じています。

訪問を終えて

クルマづくりによって蓄積されたノウハウを武器に車両架装にとどまらず、システム開発や自動運転も取り込み、社会への貢献領域を増やしていこうというトノックス。企業の生き残り戦略はシビアであり、常に挑戦していく姿勢が大事なのだということを殿内氏のお話から感じ取ることができました。

トノックスの特装車

会社紹介

株式会社 トノックス
住所 :神奈川県平塚市長瀞2番6号
TEL:0463-23-2525(代)
ホームページ:https://tonox.jp

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